アセットマネジメント業務(物件期中運営管理業務)のIT化

「アセットマネジメント業務(物件期中運営管理業務)のIT化」を行うことで、物件運用、資金管理、テナント管理、建物運営管理、商業施設運営といった業務が効率化され、生産性が向上します。
また、データ分析の精度向上、柔軟な対応、透明性の向上、コスト削減といったメリットも得られます。
今回のコラムでは、これらの変化を具体的に解説し、IT化がもたらす可能性を探ります。

1. 業務のIT化とは?

業務のIT化とは、企業の業務プロセスに対し情報技術(IT)を用いて効率化、自動化、またはデジタル化することを指します。具体的には、手作業で行っていた業務をコンピューターシステムに置き換えたり、紙ベースの文書を電子データに変換したりします。また、データ分析ツールを導入してビジネスの意思決定を支援したり、クラウドサービスを活用してリモートワークを可能にしたりすることも含まれます。これにより、業務の効率化、コスト削減、エラーの減少、情報共有のスムーズ化などの効果が期待できます。

なお、同じ様な言葉で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というものがありますが、DXは、IT化をさらに進め、企業全体のビジネスモデルそのものをデジタル技術を活用して変革することを指します。これには、AIやIoT、ビッグデータなどの最新技術を活用し、新たな価値を創出したり、競争優位性を確保したりすることが含まれます。つまり、IT化は業務の効率化を目指すのに対し、DXは企業全体の価値創造を目指すという違いがあります。

2. アセットマネジメント業務のIT化概要

本章では、前回のコラム(アセットマネジメントとは?不動産業におけるアセットマネジメントの役割)で説明した8つのアセットマネジメント業務を、大きく以下の5つの業務グループに分類し、各グループの業務が主要データと必要なシステムを利用することでどのように変わるかを、イメージ図と共に説明します。

図1 アセットマネジメント業務のIT化概要

① 物件運用(運用計画・運用報告業務)


財務管理システムと物件管理システムの活用により、物件の稼働率、賃料収入、運用コスト等のデータ管理が効率化され、運用計画の策定や修正、差異分析が迅速に行えます。これにより、物件運用業務の精度と速度が向上します。

・ 物件の運用計画を策定し、その運用状況を定期的に報告する。
・ 物件の稼働率や賃料収入、運用コスト等のデータを管理し、適切な運用計画を立案する。
・ 運用報告では、計画と実績の差異分析を行い、必要に応じて運用計画の修正を行う。

② 資金管理


資金管理システムと財務管理システムの活用により、物件運用に必要な資金の管理、資金繰り表の作成、資金需要予測、資金調達計画の立案が効率化されます。これにより、資金コストの最小化と適正な運用が可能となります。

・ 物件運用に必要な資金の管理を行う。
・ 資金繰り表を作成し、資金需要予測を行い、適切な資金調達計画を立案する。
・ 資金の適正な運用を行い、資金コストの最小化を図る。

③ テナント管理(テナント管理・リーシング管理業務)


物件管理システムとCRMシステムの活用により、テナント情報の一元管理と契約更新状況の把握が容易になり、リーシング戦略の策定やテナント満足度向上施策の実施が効率化します。

・ テナントの契約管理、満足度管理を行う。
・ テナント情報を管理し、賃料収入を最大化するためのリーシング戦略を策定する。また、テナント満足度を向上させるための施策を実施する。

④ 建物運営管理(建物運営管理・建物修繕管理業務)


物件管理システムと設備管理システムを活用することで、建物の設備状況や修繕履歴の把握が容易になり、修繕費用の最適化や稼働率の最大化につながる施策を迅速に策定できるようになります。

・ 建物の運営管理と修繕管理を行う。
・ 建物の状態を定期的にチェックし、必要な修繕を行う。
・ 建物の稼働率を最大化するための施策を策定する。

⑤ 商業施設運営


CRMシステム、人流解析システム、POSシステムを活用することで、売上、来客数、テナント満足度のデータ分析が効率化され、これにより、商業施設の魅力向上やテナント満足度向上の施策策定が迅速化し、施設運営の質が向上します。

・ 商業施設の運営を行う。
・ 売上データや来客数を分析し、施設の魅力向上やテナント満足度向上のための施策を策定する。



IT化することで得ることが出来るメリットは、
■ 効率化と生産性向上
■ データ分析の精度向上
■ 柔軟な対応
■ 透明性の向上
■ コスト削減
     となります。

次章で、各メリットに関してもう少し詳細に見ていきたいと思います。

3. IT化のメリット

メリット
効率化と
生産性向上
データ分析の
精度向上
柔軟な対応
透明性の向上
コスト削減
効果的な業務
物件運用
資金管理
テナント管理
商業施設運用
テナント管理
建物運用管理
物件運用
資金管理
資金管理
建物運用管理
概要
手作業で行う必要のある作業時間が大幅に削減、自動化によりミスの発生を防ぐことができ、生産性も向上
大量のデータを迅速かつ正確に分析することが可能、AIや機械学習を活用することで、予測分析やトレンド分析も可能
業務のプロセスを柔軟に変更し、市場環境の変化や顧客のニーズに迅速に対応。リモートワークの普及により、場所にとらわれずに業務を行える
業務プロセスや結果をデジタルデータとして記録・保存が可能、業務の透明性が向上し、内部統制やコンプライアンスの確保に寄与
業務の効率化や自動化を実現し、人件費や業務遂行に必要なコストを削減、データ分析の精度向上により、適切な運用戦略を策定可能
効果ポイント
物件管理システムや財務管理システムの活用により、情報の一元管理と業務効率化が可能となり、生産性向上につながります。また、データ分析により適切な運用計画を立案し、物件の収益性向上に寄与します。
CRMやPOSシステムを活用することで、テナントの満足度や売上データを把握し、分析できます。これにより、テナントのニーズや消費者の購買行動を理解し、適切な戦略や改善策を策定できます。
物件管理システムや設備管理システムの活用により、テナントのニーズや建物の状態をリアルタイムで把握し、迅速かつ柔軟な対応が可能となります。これによりテナント満足度や建物の稼働率が向上します。
物件管理システムや財務管理システムの活用により、運用状況や資金状況の透明性が向上し、ステークホルダーへの情報提供が可能となり、信頼性と組織評価が向上します。
資金管理システムで最適な資金配分と調達計画を立案し、資金コストを最小化。設備管理システムで建物状態を把握し、修繕費用を適正化することでコスト削減を実現します。

4. IT化のデメリット

業務をIT化することのデメリットとしては、下記が挙げられます。

・ 初期投資が必要
・ システム障害による業務停止リスク
・ セキュリティ対策の必要性
・ 従業員のITスキル不足や抵抗感
・ プライバシーの侵害リスク

それでもIT化を進める理由は、
・ 業務効率化や生産性向上
・ ヒューマンエラーの削減
・ データ分析による意思決定の精度向上
などが期待できるからです。

また、 デジタルトランスフォーメーション(DX)はビジネス環境の変化に対応するための必須のステップであり、競争力を維持するためには避けて通れない道です。
デメリットはリスク管理や教育、適切なシステム設計により最小限に抑えることが可能です。

5. まとめ

業務のIT化には、確かにデメリットは有りますが、そのデメリットを補っても余りあるメリットが待っています。
本コラムを読んで頂いた皆様には、是非、今一度自社業務を見直して頂き、改善できそうなポイントがあれば、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
業務のIT化でお困りの際は、お気軽に弊社にお問い合わせださい。

次回のコラムは「ファンドマネジメント視点からのAM業務(投資対象資産運用管理業務)」に焦点を当てて解説したいと思います。ご期待ください。

第1弾:アセットマネジメントとは?不動産業におけるアセットマネジメントの役割
第3弾:アセットマネジメント業務(投資対象資産運用管理業務)のIT化

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