不動産業に関するコラム

アセットマネジメントとは?不動産業におけるアセットマネージャーの役割
国内外の機関投資家が日本の土地や建物の売却収益に注目している現在、不動産業界は大きな転換期にあるといえます。
また、近年では不動産投資信託などを通して、個人でも手軽に不動産への投資が行えるようになりました。そのため、これまで金融や証券の世界に興味を持たなかった人にも、不動産は身近な存在になろうとしています。
不動産投資を行う上で欠かせない業務が「アセットマネジメント」です。
当記事では、不動産アセットマネジメントの仕事内容と役割について紹介します。また、アセットマネージャーとして働くために必要となる資格も紹介するため、ぜひご覧ください。
目次
1. 不動産におけるアセットマネジメントとは?
「アセットマネジメント」とは、投資目的での不動産形成や運用、保全を行う業務を指します。投資家・オーナーに代わって不動産の総合的な資産管理を行い、その価値を最大化することが主な目的です。
よく似た言葉に「プロパティマネジメント」がありますが、こちらは現場で不動産の直接的な管理や運用を行う業務を指します。プロパティマネジメントに関する指示を出すことも、アセットマネジメントの重要な役割の1つです。
一般的に、アセットマネジメントを行う人は「アセットマネージャー」と呼ばれます。アセットマネージャーの仕事内容は、投資家のニーズを把握し不動産を組み合わせてファンドを開発する他、買付や売却を一貫して担うことです。アセットマネージャーになるためには、幅広い知識とスキルが求められるでしょう。
1-1. なぜアセットマネジメントは必要?
ここでは、そもそもなぜアセットマネジメントが必要とされるのかを解説します。
従来のやり方で利益を得ようとすると、不動産を一棟ごとに管理・運用し、売買や賃貸を行う必要がありました。しかし、不動産を一棟ごとに管理・運用する方法では手続きが煩雑で効率が悪く、収益も安定しません。
そこで、複数の不動産を組み合わせてファンド化、さらには証券化することが可能となったことで、より多くの投資家から資金を集め、安定した運用を行うことができるようになりました。このための専門業務がアセットマネジメントであり、アセットマネージャーという専門職が誕生しました。
日本では、バブル崩壊以後の法改正によって、不動産の証券化が促進されてきました。2000年代に入ると、政府は「貯蓄から投資へ」の方針を掲げて証券優遇税制を実施し、2014年にはNISA(少額投資非課税制度)が開始されています。
また、現在では資金調達などを目的とした特別目的会社(SPC)も数多く設立されています。投資運用会社はファンドの運用を外部委託する傾向にあるため、その受け皿としてアセットマネジメント業務のサービス需要が高まっています。
老後に備えた資産運用が当たり前となってきた今日、不動産への注目度はますます上がっています。アセットマネジメントが社会に果たす役割も、非常に大きいといえるでしょう。
2. AM(アセットマネージャー)の仕事内容と果たす役割
アセットマネージャー(以下、「AM」)は、具体的にどのような仕事を行うのでしょうか。
ここからは、AMの主な仕事内容について詳しく紹介します。また、果たす役割についても紹介するため、AMに興味のある人は、ぜひ当項目を参考にしてください。
2-1. AM(アセットマネージャー)の主な仕事内容
不動産会社によって異なりますが、基本的にAMの仕事内容には「物件買付」「運用」「物件売却」の3つがあります。
以下の表は、それぞれの概要と仕事内容をまとめたものです。
また、物件買付の段階から並行して投資家への勧誘も行います。
・物件所有者との交渉
・物件の調査と査定(デューデリジェンス)
・投資分析
・投資家への勧誘
・PMや管理会社への指示・監督
・投資内容・資金計画の見直し
・決算・配当金分配
・投資家への運用レポート作成
・物件の価値評価
・売却先との交渉
・契約書などの資料作成
・最終決済
2-2. AM(アセットマネージャー)に必要な資質
AMは幅広い管理業務をこなすだけでなく、不動産相場の変動を見通す力も必要です。また、投資ファンドの運用は基本的に数年単位で行われるため、長期のプロジェクトをやり抜く責任感も重要となります。
中でも、AMが最も大切にしなければならないことは、クライアントである投資家の存在です。投資家の存在を抜きにして、投資業務を行うことはできません。どのような判断をする上でも、投資家と目的を共有することが大前提となるためです。
AMは、クライアントのさまざまな要求に応えて、不動産を探さなければなりません。
クライアントの要求に応じた不動産を探すためには、お互いに密な信頼関係を築くことが不可欠です。場合によっては、現在の資産内容や運用状況など、機微な部分に踏み込む必要もあるでしょう。
3. AM(アセットマネージャー)として働くためには?
ここまで、AMに興味のある人に向けて、AMの仕事内容を紹介しました。最後は、AMとして働くために必要となる資格を紹介します。
AMには、特に必要な資格はありませんが、業務経験がない状態ですぐに活躍できる仕事でもありません。AMとして早期に活躍したい場合は、いくつかの関連資格を持っておくことが重要です。
最後は、AMとして就職する際に有利となる資格について紹介します。
〇不動産鑑定士(国土交通省)
プロフェッショナルとして、土地や建物を適正に査定する国家資格です。
不動産に関する総合的な知識が求められる資格のため、AMとして物件買付を行う際には役に立つでしょう。
〇不動産証券化協会認定マスター(一般社団法人不動産証券化協会)
不動産証券化の知識に関する資格です。一般社団法人不動産証券化協会によって2006年にスタートしました。比較的新しい資格ですが、すでに多くの取得者がいます。
資格取得後も毎年の継続教育が必須となるため、常に最新の業界知識を身に着けることが可能です。
〇証券アナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会)
公益社団法人日本証券アナリスト協会が実施する資格で、金融商品に関する知識が求められます。証券アナリストの資格は、AMとして市場調査をする際に役立つでしょう。
資格を取得する際は、協会による通信講座の受講が義務付けられている点に、注意が必要です。
〇不動産コンサルティングマスター(公益財団法人 不動産流通推進センター)
名前の通り、不動産に関する専門知識をもとに、高度なコンサルティング業務を行うことを証明する資格です。
資格を取得するためには、不動産鑑定士(もしくは宅地建物取引士・一級建築士)の資格を有している必要があり、試験自体も非常に難易度が高いとされています。
今回紹介した資格は、就職や転職で有利となります。今後のキャリアプランを立てる際には、資格の取得も検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、不動産投資を管理する上で中核業務となる「アセットマネジメント」について紹介しました。
不動産業界で働いている人にとって、アセットマネジメントの仕事に就くことは、自身の知識を活かしたより専門的なキャリアアップとなるでしょう。また、企業の経営者にとっても、アセットマネジメントを導入することで資産効率の向上が見込まれます。
今後の不動産市場を見据えたとき、アセットマネジメントを行うAMは、より存在感を発揮していくに違いありません。AMとして採用してもらいやすくなるためにも、ぜひ今回の記事で紹介した資格の取得をお勧めします。
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