不動産業に関するコラム

シェアオフィスとコワーキングスペースの違い|メリットや費用相場も
近年では、フリーランスという働き方を選択する方も増え、テレワーク推進企業も増加傾向にあります。 しかし、実家や子どものいる家庭の場合、在宅勤務では集中できないということも珍しくありません。そのため、個人が気軽に利用できるサービスとして、シェアオフィスやコワーキングスペースが注目され始めました。
シェアオフィスとコワーキングスペースは、総称して「フレキシブルオフィス」とも呼ばれます。 フレキシブルオフィスの拠点数は年々増加しており、多くの方に利用されていることがわかります。
(出典:ザイマックス総研「フレキシブルオフィス市場調査2021」)
このように、シェアオフィスとコワーキングスペースは需要の高い施設であるものの、概要や違いを把握していないまま一方を選ぶと、自分のビジネススタイルに合わず、さらに集中できなくなる可能性があります。
そこで今回は、シェアオフィスとコワーキングスペースの違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
1. シェアオフィスとは?
最近では、テレワーク(リモートワーク)の推進や副業制限の緩和などにより、会社や自宅以外の場所での業務を希望する方が増えています。会社や自宅以外で仕事ができるオフィススペースには、いくつか種類があります。
例えば、来客が多く一定の占有スペースが欲しい場合は「レンタルオフィス」がおすすめです。企業によっては、支社よりも規模が小さく機動性の高い「サテライトオフィス」を、本社以外に用意するケースも増加しました。
一方、「シェアオフィス」や「コワーキングスペース」は、基本的に個人が占有できる空間のないワーキングスペース(ワークスペース)です。
では、シェアオフィスやコワーキングスペースとは、一体どのような施設・サービスなのでしょうか。
まずはシェアオフィスについて、紹介します。シェアオフィスとは、仕事をするための広いスペースを、複数の会社や個人事業主など、多様な業種・職種の方々でシェアできる有料オフィスのことです。
基本的には占有できる個室はなく、フリーアドレス制であるため、自由に働く席を選べるようになっています。一方で、自分専用ではないものの、集中して仕事に取り組むための専用ブースや、共有の会議室や応接室といった個室スペースがあるシェアオフィスも珍しくありません。
1-1. シェアオフィスを利用するメリット
次に、シェアオフィスを利用する主なメリットを4つ紹介します。
①コストを大幅に削減できる
シェアオフィスを利用する最大のメリットは、「コストを大幅に削減できる」という点です。
通常のオフィスは、占有スペースを利用できる一方、デスクや電話機などといった仕事上必要な設備を自分で準備することが一般的です。
さらに、敷金や礼金などを含む初期費用や、賃料や保守費用などのコストも必要となります。
一方、シェアオフィスでは、仕事をする上で必要なデスクやチェア、コピー機・複合機といった家具・設備・機材や、無線LANなどのインターネット環境が整っています。
パソコンや文房具などを持ち込めば仕事ができるため、大幅にコストや手間を抑えられるでしょう。
②気分に応じてワーキングスペースを自由に決められる
また、多くのシェアオフィスでは、利用するスペース(座席)が指定されていない「フリーアドレス制」を導入しています。
その日の気分に応じて自分が仕事をするスペースを自由に決められることも、シェアオフィスの魅力です。
③他社(他社)・起業家の方と交流できる
シェアオフィスを運営する会社によっては、同じグループ・系列のオフィスが利用可となる場合もあります。
座席やオフィスの位置が固定されないことにより、他社(他者)や起業家の方など社外の方と交流を持てるという点も魅力的です。
④生産性の向上が期待できる
シェアオフィスは、自身と同じような目的で利用する方が多いため、プライベートな空間の中で行う在宅勤務や、周囲の方の声や視線が気になる喫茶店などよりも、仕事が捗りやすくなる傾向にあります。J-STAGEによる調査結果では、シェアオフィスでは特に思考作業が捗るという意見があったと発表されています。
(出典:J-STAGE「シェアオフィスの利用による執務者の快適性と生産性に関する研究 (その2)知的生産性に影響を与える要因の考察およびヒアリング調査結果」)
1-2. シェアオフィス利用時の注意点
レンタルオフィスやサテライトオフィスとは異なり、シェアオフィスには、個人で占有できる専用スペースがありません。
情報漏洩のリスクが高まるため、「私物を置かない」「社外秘の資料を持ち出さない」など、リスク管理を行い、十分なセキュリティ対策を徹底する必要があります。
セミナールームなど、来客対応やミーティング・打ち合わせができるスペースが少ないことにも注意が必要です。
混雑しているときには、共用設備がなかなか利用できないだけでなく、共有スペース自体が利用できない恐れがあることも覚えておきましょう。
利用前に予約ができたり、利用中の人数や作業場所の混雑状況が確認できたりするシェアオフィスの契約がおすすめです。
2. コワーキングスペースとは?
ここまで、シェアオフィスの概要からメリット、注意点まで説明しました。
次に、コワーキングスペースについて詳しく解説します。
コワーキングスペースとは、広いワーキングスペースを他社の方や個人事業主の方などと共有し、利用者どうしが交流しながら仕事を進められるオフィスのことです。
共有ラウンジやカフェが併設されていることも多く、さまざまな利用者と交流できる拠点としても使用できるでしょう。
2-1. コワーキングスペースを利用するメリット
では、コワーキングスペースを利用するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
①初期費用や維持費が比較的安く済む
コワーキングスペースは、シェアオフィスと同様に、仕事をする上で必要なデスクやチェア、電話、プリンターといった設備や、インターネット環境が整っています。
利用料金も定額であることが多く、利用する際に初期費用がほとんどかからず、光熱費や通信費、家賃といったランニングコストも安値で済む点は大きなメリットでしょう。
②さまざまな業種・職種の方と交流できる
コワーキングスペースは、他社の方や個人事業主、起業家の方など、多様な業種・職種の方々と交流できる場でもあります。
勉強会などの交流イベントが充実しているコワーキングスペースも多く、仕事の新しいアイデアやパートナーを得ることも珍しくありません。「新しいコミュニティを作りたい」「セミナーを通して、講師や利用者から多くの刺激を得たい」と考えている方には最適です。
2-2. コワーキングスペース利用時の注意点
コワーキングスペースの「人と交流しながら仕事ができる」というメリットは非常に魅力的ですが、人と人とのコミュニケーションには「声」「言葉」を用いることがほとんどです。
仕事に集中することに重きを置いているシェアオフィスとは異なり、他人の話し声が聞こえることで、かえって仕事の効率が落ちてしまう可能性もあります。
集中力が必要な仕事をする予定の方は、注意が必要です。
仕事の効率といった点では、作業スペースの広さも重要なポイントでしょう。
コワーキングスペースによっては、仕事をするスペースがパソコン1台分ほどしかなく、自分が行いたい作業が十分にできないこともあります。
コワーキングスペースを利用する際には、事前に作業スペースの広さを確認しておくようにしましょう。
また、コワーキングスペースは人脈を広げられるといったメリットもありますが、コワーキングスペースを利用するだけで、コミュニティやプロジェクトを形成できるわけではありません。
「新たな人間関係を構築したい」「新しいビジネスを育てたい」と考えている方は、仕事をしながら積極的なコミュニケーションを図ることが大切です。
3. レンタルオフィス・サービスオフィス・バーチャルオフィス・インキュベーションオフィスとの違い
会社や自宅以外で仕事を行える空間には、シェアオフィスやコワーキングスペース以外にもあらゆる形態のオフィス空間が存在しています。現在の日本において存在するオフィス空間(シェアオフィス・コワーキングスペース以外)には、レンタルオフィス・サービスオフィス・バーチャルオフィス・インキュベーションオフィスが挙げられます。
下記は、シェアオフィス・コワーキングスペースとその他オフィス形態を比較した表です。
初期費用 | 月額費用 | 使用スペース | 法人登記の可否 | |
---|---|---|---|---|
シェアオフィス | 約5万~10万円 | 約4万~8万円 | 共有スペース | △ |
コワーキングスペース | 約4万~7万円 | 約1万~5万円 | 共有スペース | △ |
レンタルオフィス | 約5万~15万円 | 約5万~10万円 | 個室・共有スペース | △ |
サービスオフィス | 約3万~6万円 | 約5万~8万円 | 個室・共有スペース | 〇 |
バーチャルオフィス | 約5千~1万円 | 約5千~1万円 | スペースなし | 〇 |
インキュベーションオフィス | 約5万~8万円 | 約6万~10万円 | 個室・共有スペース | 〇 |
各オフィス形態の具体的な利用料金や使用可能な作業スペースは、サービスを提供している業者によって異なるため注意してください。
ここからは、シェアオフィスからインキュベーションオフィスまで、それぞれ概要やメリット、利用時の注意点を説明します。
3-1. レンタルオフィス
レンタルオフィスとは、業務を行うにあたって必要となる机や椅子、PC・ネット環境が備わった貸事務所のことです。一般的なオフィスでは、ビルのオーナーと直接賃貸契約を行って借りることが一般的ですが、レンタルオフィスでは専門業者を介してオフィスを借りることとなります。法人・個人を問わず、利用することが可能です。
レンタルオフィスにはあらゆるサイズのスペースがあり、1人や数人が利用できる小規模なスペースから、数十人が利用できる大規模なスペースまであります。業務に必要な設備はあらかじめ備わっているため、オフィス開設時のコストだけでなく、月々のランニングコストも抑えられます。オプション追加で会議スペースを利用することも可能です。
しかし、内装を自由に改装できない点や、オプションの追加により予想以上の費用がかかってしまう可能性がある点に注意が必要です。
3-2. サービスオフィス
サービスオフィスとは、オフィススペースに加え、ITサービスや利用者の事業をサポートするサービスも備わった貸事務所のことです。シェアオフィスやレンタルオフィスをベースとした形態であり、フリードリンクサービスや利用者同士のコミュニティ、さらにコンシェルジュサービスなど、あらゆるオプションも提供しています。
サービスオフィスも、レンタルオフィスと同様、初期契約時のコストや月々のランニングコストを抑えられ、お得に利用することが可能です。またサービスオフィスによっては、事業内容に関する相談を受け付けていたり、補助金・助成金の紹介をしてもらえたりもします。
しかし、サービスオフィスは利用業種や用途が限られていたり、24時間の利用ができなかったりする点に注意が必要です。
3-3. バーチャルオフィス
バーチャルオフィスとは、物理的に存在するオフィスではなく、仮想(バーチャル)のオフィスのことです。これまで紹介してきたオフィスとは異なり、バーチャルオフィスは仕事を行う空間ではなく、事務所の「住所」を利用できるサービスと言えるでしょう。
バーチャルオフィスは「オフィス」という名がついていることから、他形態と混合して考える方も多いものの、会社や自宅以外で仕事を行うための専用スペースを提供する形態ではありません。自宅などを拠点としつつも、自宅以外の住所を使用したいスタートアップ企業から多く利用されています。
バーチャルオフィスを利用するメリットには、「初期コスト・ランニングコストを抑えて事業用住所を得られること」「比較的短期間での導入が可能なこと」が挙げられます。
しかし、バーチャルオフィスはいわゆる住所のみの利用となることから、仕事をするスペースはまた別で確保しておく必要がある点に注意が必要です。さらに、お客様や取引先に住所を調べられた場合はバーチャルオフィスであることが知られてしまい、信用を得づらくなる点にも注意してください。
3-4. インキュベーションオフィス
インキュベーションオフィスとは、新たな会社の設立や事業拡大を検討している起業家をサポート・支援するための貸事務所のことです。特徴やサービス内容については、前述したレンタルオフィスがベースとなっていますが、インキュベーションオフィスは「公的機関」からの委託を受けた民間が運営していることが多くあります。
レンタルオフィスをベースとした形態であるため、初期コスト・ランニングコストを抑えられるというメリットも同様です。加えてインキュベーションオフィスは、起業家のサポートや支援を目的とした貸事務所であることから、経営や起業に関する悩みを相談することができます。利用者同士の交流もできるため、さまざまな不安を抱える方にとってはおすすめの形態と言えるでしょう。
しかし、インキュベーションオフィスを利用するためには比較的厳しい審査に通る必要があります。また、すでに起業をはじめている方の場合、インキュベーションオフィスを利用できない点に注意してください。
4. シェアオフィスやコワーキングスペースの利用の流れ
シェアオフィスやコワーキングスペースなどを利用する際の流れは、サービスを提供している業者によって異なります。しかし、基本的な流れは下記のようになっていることがほとんどです。
(1)内覧予約を行う
気になるシェアオフィス・コワーキングスペースが見つかったら、Web申し込み・電話申し込みをしてすみやかに内覧予約を行いましょう。自身が利用する際の雰囲気をしっかり掴んでおくためにも、内覧予約の時間帯は実際に利用する時間帯がおすすめです。
(2)内覧に参加する
内覧予約を行い日時が決定したら、当日に内覧をしましょう。内覧に参加する際は、オフィス内の広さや雰囲気だけでなく、アクセス駅や駅からの距離感などあらゆるポイントをチェックしておくことも重要です。いくつかの候補で悩む場合は、試しにドロップインを利用するなどして、「ここを利用したい」と思えるオフィスをきちんと見つけましょう。
(3)利用を申し込む
内覧参加後、希望の利用プランを決めて申し込み手続きを行います。一般的に、シェアオフィスやコワーキングスペースの利用申し込みには、下記の書類が必要になります(法人契約の場合)。
・会社概要書
・登記簿謄本
・印鑑証明書
・代表者の住民票
・代表者の印鑑証明書
・代表者の顔写真付き身分証明書
上記の書類を揃えた上で、スタッフの説明に従いながら利用申し込み手続きを進めましょう。
(4)利用審査を受ける
利用申し込みが済んだら、シェアオフィス・コワーキングスペースの運営会社による利用審査が行われます。利用審査の内容や基準は、運営会社によって異なることが基本です。審査は必要書類のチェックだけでなく、面談でチェックするケースも多々あります。
(5)契約して利用を開始する
利用審査に通ったら、最終契約を行い、正式な契約書を取り交わすこととなります。契約完了とともに初期費用を支払い、運営会社が入金を確認した後、シェアオフィス・コワーキングスペースの利用を開始できます。契約開始日は現地で鍵の受け渡しが行われることが基本です。
5. それぞれどういった人の利用が向いている?
シェアオフィスとコワーキングスペースは、「ワーキングスペースを他の方とシェアして利用する」という点で共通しています。
諸経費を抑えられるため、起業・開業して間もない方や、大きなワーキングスペースは必要ないという方は、利用を検討しても良いでしょう。
営業に行くことが多く、オフィスにいる時間が少ない職業の方にもおすすめです。
このように、シェアオフィスとコワーキングスペースは共通点が多く、サービス形態もよく似ています。
しかし、この2つの施設は、利用する方の主なニーズが異なるという点に注意が必要です。
シェアオフィス | 仕事に集中して取り組みたい方が多い |
---|---|
コワーキングスペース | 仕事をしながら、他の方との交流を深めたい |
シェアオフィスは、「複数の企業が1つのワーキングスペースを共用すること」から出発した施設形態であり、集中して仕事をするために利用している方がほとんどです。
一方、コワーキングスペースは、人脈を広げたり新しい知見を得たりしながら仕事を進めたいワーカーが多く利用しています。
どちらか一方を選んで利用することも良いですが、その日の気分や仕事の内容によって、オフィスサービスを使い分けることも1つの方法です。
シェアオフィスやコワーキングスペースの利用方法・契約プランを検討し、自分に合ったワークスタイルを構築しましょう。
5-1. シェアオフィス・コワーキングスペースの今後の需要は?
2020年初頭から日本全国に広まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、テレワーク・在宅勤務により拍車がかかりました。度重なる緊急事態宣言による影響が特に大きかった東京都では、2021年10月時点においてもテレワーク実施率は55.4%となっています。
(出典:東京都「テレワーク実施率調査結果をお知らせします!10月の調査結果」)
また、ザイマックス総研からは、オフィス需要にかかわるさまざまな調査データも発表されています。
オフィスの「在籍人数」の変化(2021年春期) | |
---|---|
増えた | 18.6% |
減った | 28.9% |
変わらない | 51.0% |
(出典:ザイマックス総研「大都市圏オフィス需要調査2021春」)
オフィスの「面積」の変化(2021年春期) | |
---|---|
拡張した | 5.5% |
縮小した | 8.3% →縮小の理由のうち、58.8%がテレワークによるもの |
変わらない | 84.4% |
(出典:ザイマックス総研「大都市圏オフィス需要調査2021春」)
コロナ禍により、テレワーク・在宅勤務が普及した近年、オフィス需要は低下していることがわかります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収束に向かっている現在でも、テレワークを続けるという意向を見せる企業も少なくありません。
働き方の多様化も注目されていることから、シェアオフィス・コワーキングスペースは今後さらに需要が高まることが考えられます。働き方の多様化に対応する勤務環境の整備を検討している企業や、より集中できる環境で働きたい個人事業主・フリーランスの方は、これまで説明した情勢も踏まえ、各種オフィスの適切な形態を選択しましょう。
まとめ
シェアオフィスとコワーキングスペースは、1つのワーキングスペースを他の利用者とシェアして利用するオフィスサービスです。
両者ともに「コストを抑えられる」「他の利用者と交流できる」というメリットがありますが、それぞれ利用目的が異なる点に注意しましょう。
仕事に集中したいときはシェアオフィス、他の利用者としっかり交流したいときはコワーキングスペースといったように、かしこく使い分けることをおすすめします。
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