コラム

働き方改革を促す次世代賃貸管理業務のシステム化最新動向

1.はじめに

日本企業の課題として、「働き方改革」が大きく取り扱われています。会社のルール(ハード)面での取り組み(No.1,2)は、引き続き各企業様で取り組みをお願いするとして、今回のコラムでは、ソフト面での事例、ソリューションをご紹介したいと思います。

No.
1
2
3
テーマ
多様な働き方、制度
長時間労働の是正・休暇取得促進
業務の効率化
テレワーク、モバイル、育児休暇、介護休暇、高齢者雇用
時短目標、残業目標設定、有給取得促進
ITによる業務改善

2. 賃貸管理システム及び周辺システム全体像

まず、賃貸管理を実現する業務分野として、基幹システム(下図の緑の機能)が中心にあります。これは、顧客との契約・工事管理などから請求・支払(債権・債務)を管理し、財務会計に連携する会社の中心となる業務です。これに付随する周辺業務として、フロント業務と呼ばれる顧客管理業務、ビルのエネルギー等を管理し、顧客への変動費請求の元となるBA※1/BEMS※2等があります。それから、決済システムへの連携や収支や多くの分析データと連携する経営管理業務、財務会計業務などがあります。これら多くの業務について、ITを活用しながら、自社の強みにあった情報連携を行っていく必要があります。

(脚注)
BA… Building Automation System 電気設備や空調設備等、ビルの設備機器を統合的に関管理するシステム。運用状況を一元管理することで、管理業務の高度化、省力化等を目的とする。

BEMS…Building Energy Management System 空調、電気、水道など、ビルのエネルギー情報を統合的に管理するシステム。自動検針メーターを活用して、部屋やテナント毎のエネルギー使用量を一元管理できる。

3. 基幹システム(物件・契約・債権・債務管理)

さて、現在、基幹システムの導入はどのくらい進んでいるのでしょうか。弊社独自で調査した結果をご紹介しますが、システム未整備の会社は17.1%でした。不動産業界は、独自の商習慣や契約書の保管義務などから、システム化が遅れていると一般に言われていますが、ある程度の売上規模の会社にも関わらず、5社に約1社はまだ未導入という状況であり、財務会計などの分野に比べるとまだまだ整備が遅れている分野であると言えます。

昨今、「不動産テック」という言葉も出てきていますが、まずは従来から行っている不動産賃貸管理業務を基幹業務とし、その「周辺システム」を各企業の強みに合わせて整備していくことが重要と考えられます。

4. 周辺システムの動向

続いて、周辺システムの最近のトレンド・動向について、弊社のシステムコンサルティング、導入状況の経験をもとに、お伝えしたいと思います。

■顧客管理(SFA/CRM)
現在、多くの企業では、顧客管理の分野においては、顧客の名簿管理、営業日報管理に留まっている状況と言えます。一部の進んでいる企業では、営業情報から連携して、受発注データを基幹システム連携を行い、省力化を実現している状況と思われます。
現在、名刺管理等のシステムもAIによる自動認識技術を元に普及してきましたが、将来的には、名刺管理からMA(マーケティングオートメーション)により、見込み顧客の創出や、法人営業による顧客の関係維持・強化による施策を、ベテランの経験・カン・コツ以外にも合理的な意思決定・判断につなげていくことが求められると考えています。MAについても、各社メーカーから色々なプロセスに対応する製品が出てきていますので、組織だった営業力強化の施策として、是非ご検討をお勧めします。

■BA(BEMS)システム
こちらのシステムも、新しいビルについては、最新のBAシステムが装備されていますが、実務上は、新旧ビル毎のエネルギー、空調データを作成するBAシステムの違いにより、多くの企業では、自動連携、手動連携、手入力の業務を混在している状況が大半です。このため、基幹システム等、連携システムでの柔軟な機能が求められていると言えます。
また、テナントにエネルギー使用量の詳細な情報を提供している会社はまだ少数の状況です。テナントリレーション強化の一環としてもデータ分析・付加価値提供が今後重要になってきていると考えられます。

■入出金管理(決済)
法人向け賃貸管理業務では、振込による決済が殆どで一部が引落の状況です。このため、殆どの会社が銀行データまたは収納代行会社との連携が出来ている分野といえます。全銀EDI等の新フォーマットも登場しておりますが、利用手数料がかかることから、今後、決済API等の技術及びセキュリティ環境の発展を待って、接続システム側の改修が見込まれる状況と考えられます。

個人(住居)向け賃貸では、引落がメインであるが、コンビニ、カードなど、今後多様な決済手段が増えていく見通し。
(参考:eccLab EC業界カオスマップ2018 - EC決済サービス編

■財務会計
こちらは標準化しやすい業務であり、システム化が進んでいる分野ですが、パッケージソフトが成熟し、今後はさらにクラウド化が加速し、従来のパッケージソフトメーカーもクラウドサービスを続々と提供を開始してきています。
しかし、一方で、独自の会計処理により、基幹システム連携ができないケースも多く散見されます。例えば、前受、未収、振替の取扱い、科目ごとのローカルルール、補助科目に取引先などを流用等、色々な企業独自のルールにより業務を進めているケースが大半です。仕訳データで収支管理を行っている会社も多数あり、タイムリーな意思決定に支障が出ているケースも多くあります。これは、別のコラムでも書きましたが、仕訳(財務会計)で基幹業務を行ってきたことの名残りであり、会社全体で見ても、複雑な業務処理にコストを多く掛ける結果となっているため、会社全体の視点で、業務の最適化を行う必要があります。

■収支・BI・DWH
この分野はまだまだ未開拓の状況です。特に大企業でも、予算業務フローの未整備の会社が多く、IT化の前にBPRによる業務の最適化、効率化が必要と考えられます。また、Excelによるデータの蓄積・分析ではなく、(ビッグ)データをデータベースに蓄積し、エリア、建物、顧客、時間軸など、多様なデータの分析による意思決定が今後益々重要になると思われます。

■非定型業務への対応
届出管理やちょっとした申請業務、新しい業務分野への取り組みなど、基幹システムとは別の変わりやすい業務に対しての取り組みも重要です。Excelでは複数人・部門での利用に限界もあることなどから、会社独自のコア業務・強みとなる業務をExcelとは別の柔軟なシステムへ移管していくことが今後の競争力強化のポイントと考えております。
弊社ではCELFという製品を活用して、このような基幹システムには乗りにくい業務についての導入を行っております。
CELF “セルフ” 『Excel感覚で誰でも業務アプリがつくれるクラウドサービス』

■不動産テック
最後になりますが、最近は「不動産テック」というITのテクノロジーで不動産業務を変えていく言葉が出てきております。不動産業務の各分野でクラウドサービスや最新のデバイスを利用したサービスが主流となっています。
今後、企業の一部の業務をこれらのクラウドサービス等にシフトしていくことにより、基幹業務との連携が競争力強化の鍵となっていくことが予想されます。
(参考 不動産テック カオスマップ最新版(第4版)2018年11月28日

5. まとめ

本コラムをお読み頂き有難うございました。最後にまとめとして、2点挙げさせていただきます。

  • 1.不動産テックという言葉も出てきていますが、まずは従来から行っている不動産賃貸管理業務を基幹業務とし、その「周辺システム」を各企業の強みに合わせて整備していくことが重要と考えています。そのためには、全社トータルでの視点で業務の最適化、IT化を行い、従来の人手による業務を省力化しつつも生産性を上げていくことが必要です。
  • 2.その上で、一部の業務については、斬新なITツール・クラウドサービス等を活用することで、これらの業務との基幹システムとの連携が競争力強化の鍵となることが予想されます。

解説者紹介

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矢田昌宏
株式会社コンシスト/営業推進本部 営業推進部長

不動産(事業収支、賃貸借、債権債務)、金融(信用リスク、格付等ミドル業務)、会計業務のシステム計画、設計が主な専門分野。
不動産賃貸管理業向けの業務システム開発経験を元に、不動産管理スケルトンパッケージの企画・開発に携わり、現在は営業責任者として、顧客提案までを担当。

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