コラム

統計分析を用いた次世代型事業収支シミュレーション

1.事業収支の変動リスク

事業の収支は将来にわたって約束されたものではなく不確実なものです。そのため事業計画の精度を高め事業の採算性を向上させるためには、「リスク」と呼ばれる変動要因による事業収支への影響をシミュレーションして、キャッシュフローにその変動リスクを反映させ、その取りえる範囲を考慮する必要があります。不動産賃貸事業を例に考えて見ましょう。
不動産賃貸事業は、

  • ・賃料単価、空室率等に起因する収入変動リスク
  • ・管理外注費、水道光熱費、清掃費、警備費、設備関係費等に起因する費用変動リスク
  • ・不動産価値に起因する価格変動リスク
  • ・調達金利に起因する金利変動リスク
  • ・固定資産税、都市計画税、減価償却費等に起因する税制改正リスク
  • ・事故・火災、地震等に起因する事故・災害リスク
  • ・その他リスク(欠陥・瑕疵リスク、法改正リスク、流動性リスク・・・・)

等の様々なリスクにより事業収支も大きく変動するため、事業計画の策定やその根拠を示すことは非常に難しい作業となります。
それでは簡単な例で実際の事業収支の例を見てみましょう。

2.不動産賃貸事業収支

ここでは話しを簡単にするため、不動産賃貸事業の変動要因は「空室率」「賃料」「修繕費」として収支を算出します。

不動産賃貸インフルエンスダイアグラム

では質問です!
皆さんは事業の収支や成功確率、失敗確率を知るために一所懸命時間をかけてExcelで試行錯誤するも、最終的に「えいゃー」で松・竹・梅の3案で事業の評価をしていませんか?

3.松竹梅分析

皆さんが良く実施する松竹梅分析を見てみましょう。

【シミュレーション結果】

シミュレーション結果

【シミュレーション条件】

シミュレーション条件(空室率)シミュレーション条件(賃料)シミュレーション条件(修繕費)

このやり方は各ケースの収支金額は分かりますが、

  • ・収支金額毎の起こり得そうな確率
  • ・目標収支(基準値)が達成出来る確率や達成出来ない確率

は分かりません。
我々が思い描ける未来のシナリオの数には限りがあります。
では、どうしたらその様な情報が得られるのでしょうか?
それは、モデルに基づいて確率的シミュレーションを実行し、未来に起こり得る多様な可能世界とそこに至る多数のシナリオを生成することで、多様な未来シナリオを網羅的に列挙することです。
そうすることで不確実性(リスク)を捉えることができ、

  • ・計画している基準値が成功する確率は○%
  • ・期待できる収支金額(平均値)
  • ・発生しやすい収支金額(中央値)
  • ・起こり得る最大の収支金額(最大値)
  • ・起こり得る最小の収支金額(最小値)
  • ・赤字になる確率は○%
  • ・利益が10億円を下回る確率は○%
  • ・68%(全体の2/3)の確率で実現できそうな収支金額

等を知ることができます。
この方法はダイナミックDCFと呼ばれています。

4.ダイナミックDCF分析

ダイナミックDCF分析を取り入れることで、変動要因のシナリオカバレッジが増加し、松竹梅分析では実現できなかったより深い洞察を得ることが出来ます。
では、ダイナミックDCF分析の一部を見てみましょう。
先ず、計画した基準値を元に空室率、賃料、修繕費が松竹梅分析のベストケース・ワーストケースと同じ状態になるように上ブレ率、下ブレ率のパラメータ(変化率、上限値等)をセットし、自動的に10,000本のシナリオを作成してみます。

【シミュレーション条件】

下記グラフは10,000本のシナリオから20本をランダムに抽出して表示しています。
松竹梅分析のシミュレーション条件と比較してみて下さい。上ブレ、下ブレの幅はほぼ同じことが見てとれます。

シミュレーション条件(空室率)シミュレーション条件(賃料)シミュレーション条件(修繕費)

【シミュレーション結果】

では、ダイナミックDCF分析の結果を見てみましょう!

■計画している基準値が成功する確率 7.61%
■計画している基準値が失敗する確率 92.39%
■期待できる収支金額(平均値) 16,428,506
■発生しやすい収支金額(中央値) 16,503,921
■起こり得る最大の収支金額(最大値) 19,411,125
■起こり得る最小の収支金額(最小値) 11,305,700
■68%(全体の2/3)の確率で実現できそうな収支金額 15,497,029 ~ 17,354,341

松竹梅分析のシミュレーション結果より得られる情報量が格段に増加したことがわかると思います。
ダイナミックDCF分析のシミュレーション結果から読み取れることは、「残念ながら期待値はかなり楽観的な計画と考えざるを得ない」と言うことです。
以下のグラフは上記の「シミュレーション結果」を得るために利用されたものです。

◆期待できる収支金額/発生しやすい収支金額/起こり得る最大の収支金額/起こり得る最小の収支金額

※ユーザ計画は期待値を表しています。

◆計画している基準値が失敗する確率

◆計画している基準値が成功する確率

◆68%の確率で実現できそうな収支金額

5.最後に

いかがでしたか?
ダイナミックDCF分析を行うことで松竹梅分析より、より深い洞察を得られることをご理解頂けたでしょうか。コンシストでは、ダイナミックDCF分析を使用して事業収支の変動リスクを分析できるツールの販売を開始いたします。
このツールは貴社における
strong「シミュレーション+リアルオプション+AIによる事業計画のチェックと戦略最適化の実現」
を全面的に支援するために企画・開発されました。
ご興味のある方は、是非弊社営業までお問い合わせ下さい。
統計分析を用いた次世代事業収支シミュレーションの次回以降のコラムでは、

  • ・リスク分析の考え方
  • ・リアルオプション
  • ・AIによる戦略最適化

を考えてみたいと思います。

不動産管理スケルトンパッケージ

お問い合わせ