Products不動産管理スケルトンパッケージ

不動産管理システムの導入を阻む3つの壁

1.システム化がなかなか進んでいない不動産業界

前回、コラム『ビル別収支管理システムの導入を妨げる理由』では、規模が大きい企業でもなかなかIT化が進んでいないと書きましたが、不動産業界は、独自の商習慣、契約書の保管義務、不動産管理を事業のコア業務にする会社が少ない(例えば、製造、運輸、金融業などのサブ業務として不動産管理を行っている会社も多い)などの理由もあり、ITの導入は半数程度となっています(参考文献)。コンシスト調べにおいても同様です。

これは、不動産管理業が、
(1)積極的にITを使って顧客を獲得する攻めの業態よりも、一旦構築した不動産、顧客関係を維持する守りの業種であること、
(2)請求金額の計算や請求書の発行業務以外がITを使った業務になりにくいこと、
(3)業務標準化、システム化がされていないから、個別の顧客固有の条件で契約を受けてしまう→さらにシステム化しづらくなる、の悪循環があること、
などが考えられます。

仮に、不動産管理業のシステム化の状況を下記の5つのレベルに分類すると、中堅・中小の多くの企業がレベル1からレベル2であることが多い状況となっています。(コンシスト調べ)

不動産管理業におけるシステム化レベル

レベル0 手作業(Excel)
レベル1 請求書自動作成
レベル2 バックオフィス(債権債務管理)
レベル3 収支・経営分析
レベル4 先進的フロント業務(CRM等)、シミュレーションシステムによる情報指示機能

2.業務別IT導入状況及びニーズ

下記に、レベル1~2の多くの会社について、典型的なIT導入状況・ニーズをまとめてみました。(中小、中堅企業 売上高10億~100億前後 ※コンシスト調べ)

  • ・物件管理…Excel等で最新の空き物件リストを作成しているお客様が多い。このため、最新の空室状況を共有したいというニーズが多い。
  • ・取引先管理…部門ごとに独自のシステムやExcelなどバラバラで管理しており、顧客情報(コードや属性情報)をグループ間で共有したいニーズが多い。
  • ・契約管理…契約書はキングファイル等での紙ベースでの保管が主流であり、検索性を上げ、過去の賃料情報を見たいという意見が多い。
  • ・請求管理…請求書の枚数が増えるとExcelやAccessを駆使して、検針業務や請求書発行業務を効率化しているケースが多い。
  • ・入金管理…通帳やインターネットバンキングでの入出金状況を元に、入金済みの確認を 実施しているケースが多い。
  • ・支払管理…支払伝票やリストを元に、インターネットバンキングや銀行とのオンライン端末に直接登録しているケースが多い。
  • ・会計連携…自動仕訳までシステム化を行い、会計パッケージにデータ連携しているケースは少ない。
  • ・収支管理…特段システム化を行わず、会計システムの仕訳データを元にExcel等で手作成のケースが多い。

営業・請求部門と経理部門、経営管理部門それぞれの管理方法

では、一体このような状況を打破するにはどのようにしたら良いでしょうか。

3.不動産管理システムの導入を阻む3つの壁

筆者は、ITの導入が進まない問題については、本質的には、下記の3つの壁が原因と考えています。お悩みの方は、下記のチェックリストで、貴社の状況をご確認ください。

貴社が抱えている3つの壁を把握しましょう!

貴社が抱えている3つの壁を把握しましょう!

(1)ビジョンの壁:目的が不明確
~説得、浸透させるためには、出来るだけ易しいメッセージに。~

システムの目的は明確になっていますか?新しいシステムも、古いシステムも再度確認しましょう。

<具体例>

  • ・月次締め3日以内に物件収支レポートを作成する。
  • ・請求業務にかける時間を現在の半分にする。
  • ・顧客のご指摘・クレーム件数を毎月○件以下にする。
  • ・5年間での総コスト(初期・ランニング)は○○円、現行システムを維持した場合は、5年で○○円と算出をする。

(2)人の壁:目的を達成するインセンティブがない
~導入のインセンティブも要件定義(要件固め)しよう~

システムを導入したら、企画・導入者のあなたも、利用者のあなたも嬉しい結果が待っていますか?システムに関わる人が全て喜ぶように、再度要件を確認しましょう。

<具体例>

  • ・導入推進者のあなたは、システム導入を乗り切った後に、どのような嬉しい結果が待っていますか?
  • ・利用者は、IT化により紙の運用は本当になくなっていますか?実は仕事が増えていませんか?再度、業務フローの確認を。
  • ・システムの試行運用時にかかる一時的な負荷について、必要な体制の理解を得ていますか?
  • ・業務の例外運用とシステムによる標準運用のどちらが嬉しいか、ユーザー部門に判断してもらっていますか。(特にお客様との特約条件、請求書の印字方法など)

(3)スキル・ノウハウの壁:ITに対しての正しいスキル・知識がない
~ITは会社の神経系統です。情報伝達のロスやミスを防ぐために、自社のレベルを認識した上で、適切な方法の選択を。~

<具体例>

  • ・シンプルな業務フローになっていますか?そして正しく入力できる運用ルールになっていますか?
  • ・システムの中の造りは、躊躇せず外注の専門業者に任せて(頼って)いますか。
  • ・ワークフロー、電子承認を簡単に考えていませんか。本当にPCの画面上で業務承認を行うのか確認していますか?(一般的には、利用者の年齢が上がると電子承認の負担が上がります)
  • ・システム研修・勉強会などを行っていますか?業務システムだけでなく、普段お使いのソフト(Officeなど)でも勉強会を実施しましょう。
    (昨今は、システムベンダーでも研修実施を請負うことが増えています。)

4.まとめ

正しい考え方を持って、ITの企画・導入を行っていけば、ITは面倒なものでも、社員を苦しめるものでもありません。システムを使う一利用者として、分かりやすく目標を定めていけば、それに見合うパッケージ、システムベンダーがきっと見つかるはずです。

(参考文献)

解説者紹介

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矢田昌宏
株式会社コンシスト/営業推進本部 営業推進部長

不動産(事業収支、賃貸借、債権債務)、金融(信用リスク、格付等ミドル業務)、会計業務のシステム計画、設計が主な専門分野。
不動産賃貸管理業向けの業務システム開発経験を元に、不動産管理スケルトンパッケージの企画・開発に携わり、現在は営業責任者として、顧客提案までを担当。

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