コラム

ビル別収支管理システムの導入を妨げる理由

1.意外と普及していない収支管理システム

ビルを所有している不動産管理会社において、月次の賃料請求及び入金業務については、毎月大量のデータを取り扱うルーチン(繰り返し)業務でもあることから、何かしらのシステムを入れている(入れざるを得ない)ことが多いと思います。
しかし、その賃料請求のデータを活用してビルの収支管理業務をシステムで自動化できている企業がどの位あるかというと、これだけオフィス内のIT化が進んだ現在でもあまり導入は進んでおらず、規模が大きい企業(賃貸事業収入が100億以上)でさえ実施できていない印象を受けます。
貴社の導入状況はいかがでしょうか。

2. 導入が進んでいない理由

さて、導入が進んでいない理由はいくつか考えられますが、システム化そのものにかかるコスト(パッケージ製品代およびシステム構築費用)もさることながら、会社で決まっているべき、業務ルール・フローの詳細が決まっていないことが多いと考えています。
このルール・フローが決まっていないと、システム構築ベンダーに依頼しても打合せや試行運用の期間が長くなり、導入コストも高くなりがちになり、最悪の場合はプロジェクト中止となりかねません。

  • ・システム導入費用が高いから
  • ・システムの担当がいない(忙しい)から
  • ・業務ルール・フローが曖昧だから
     →業務締め、財務締めなどの仕組みが弱い(後述)
     →売上・費用計上月のルールが一部決まっていない(後述)

よく日本のホワイトカラーの生産性が欧米に比べて低く、長時間労働の温床となっていると揶揄されていますが、こういったルール・フローを一刻も早く整備し、しっかりとした規律・ルールの中で、イキイキとメリハリをつけて働くことのできる会社づくりのご支援をしていきたいと筆者は考えています。

3. なぜ業務ルールやフローが決まらないのか?

では、なぜ業務ルールやフローが決まらないのか、その整備を行うのが難しいのかについて触れたいと思います。

まず、営業部門の課題ですが、建物別の売上は分かるが、仕入管理を行っていない、又はあいまいな部分があるため、どれだけ利益(粗利)が出ているかを部門で把握しづらいところにあると考えています。

これは、日本企業の経理業務の伝統なのか、売上に必要な仕入(売上原価)を経理・財務部門に任せてしまっているケースが多く、事業部門で毎月の売上総利益(粗利)を全てとは言わないが、確定額まで把握せず、経理に作成を依頼してもらっている企業が多いのではないでしょうか。

概ね翌月の15日から20日位に前月分の部門別、ビル別収支などが経理・財務部門によって作成されるイメージとなります。会社によっては、請求書の受領及び実際の支払いのタイミングの都合上、翌月では終わらない(業務プロセスになっている)会社も見受けられます。

仕入額の登録・管理・支払実行を経理部門に任せるのは問題ありませんが、仕入額の「計上」については、営業部門の責任範囲のため、その計上ルール及び把握は事業部門で厳しく行うべきです。

一方、依頼された経理部門としては、建物単位でなく、支払伝票の単位で会計システムに入力していることが多いので、建物単位の収支データを作成する際に戻り作業になり時間がかかってしまいます。また、戻り作業は心理的にも負担となる作業および調整事項が多いため、部門間で反発が出ることも多いのが実情です。

営業部門(フロント業務)と経理部門(バック業務)比較

  • ・収支管理が浸透しない理由は、業務フロー、役割分担の問題であることが多い
  • ・営業部門による仕入れ管理業務をシステム化していないケースが多い

4. 業務ルールの不備をあぶり出す収支管理システムの導入

さて、実際のシステム導入事例になりますが、事前の打ち合わせを綿密に行ったにも関わらず、システムの試行運用段階になって、業務データのインプットの順番や、売上・仕入計上月のルールが決まっていないことが露呈してしまうケースも大変多く発生します。このエラーが数件であれば問題ありませんが、想定以上のエラーの検出を防ぐため、試行運用前に、導入打合せで決めたルールに基づいて、ねらい通りの収支管理表を作成できるか、予めリハーサルをしておきましょう。
システム構築にITベンダーを利用する場合は、ベンダー任せ(丸投げ)にせず、予めどういう結果が予想されるか密に相談を行っておくことをお勧めします。

他方、システム化を行うことによって、このルールを意図的に「あぶり出す」こともシステム導入のねらい、となるので、経営層やミドル層の導入責任者には、システム化を機会に、人間系の業務ルール・フローの整備を強化するとともに、以下のような役割分担を行い、営業部門で仕入れ管理業務を実施することをお勧めします。

例1

区分
売上原価
(仕入)
説明
ビル運営費、労務費など、建物ごとに分けて認識する(べき)もの
どのシステムへ
インプットするか
支払伝票起票時、
不動産システムに入力
建物別に管理する利益
売上総利益(粗利)
担当部門
営業部門

例2

区分
販管費
説明
本社経費、人件費など、建物ごとに分けることが難しいもの
どのシステムへ
インプットするか
会計システムに入力
配賦機能を利用し、人別、床面積別などで分配
建物別に管理する利益
営業利益及び経常利益
担当部門
経理、財務部門

5. まとめ これからの収支管理システム

以上、長々と書きましたが、収支管理システムに限らず、業務を標準化し、システム導入を進めることは生産性の向上のみならず、企業の収益力の強化に必ずつながると筆者は考えています。

毎月、月締め後、半月~1カ月位(最悪のケースで)かかっていた収支締め業務を月締め後3~4日程度に短縮し、正しい損益状態を把握して、先月のまずかったアクション・施策に対して、素早く手を打つ、これをシステム化の目的として頂ければ、システムベンダーに所属する筆者としては、やりがいのあること、この上ありません。

業務ル-ルを整備・強化して、快適な収支管理業務の実現と黒字体質の事業を目指して・・・

仕分けデータ中心から基幹データ中心へ。財務会計から管理会計を中心に!

解説者紹介

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矢田昌宏
株式会社コンシスト/営業推進本部 営業推進部長

不動産(事業収支、賃貸借、債権債務)、金融(信用リスク、格付等ミドル業務)、会計業務のシステム計画、設計が主な専門分野。
不動産賃貸管理業向けの業務システム開発経験を元に、不動産管理スケルトンパッケージの企画・開発に携わり、現在は営業責任者として、顧客提案までを担当。

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