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貴社は見える化で終わっていませんか?
ITを活用した先制型経営リスク管理のすすめ

経営環境の変化が著しい時代に貴社はタイムリーに意思決定し、行動に移すことができていますか。社内外の様々なデータから経営に関わるリスクを早期に発見し、先制型で対応するための手法とソリューションについてご紹介します。

グローバル経営におけるリスク管理の重要性

変化が著しい経営環境の中で企業が持続的成長を目指すには、様々なリスクを監視し、最適な判断をタイムリーに行っていく必要があります。特にグローバル展開している企業は、為替や金利の変動、債権の貸し倒れ、現地法人やその取引先の不正など国内よりも大きなリスクに晒されており、リスク監視が非常に重要になります。しかし、多くの日本企業はグローバルでのガバナンスが弱く、また、IT化が遅れており、重要なリスクが増大していても、問題が顕在化しなければ親会社は把握できないのが現状です。

PDCAサイクルをベースにした経営管理の課題

多くの日本企業ではPDCAサイクルの経営管理が浸透しています。PDCAサイクルは、目標値と実績値の対比が行われ、実績値が下回れば、行動が是正される、いわゆるフィードバック・コントロールです。フィードバック・コントロールは、実績が出るまでは行動が是正されることはないので、外部環境が一定の場合、機能しますが、環境変化が著しい場合、対応の遅れが問題となります。
一般的なPDCAサイクルの経営管理では、中期経営計画が策定され、それに基づき、年次計画が立案され、計画や予算の見直しは半期・年次に固定されています。しかし、変化が激しい昨今、計画立案当初の前提となった環境が大きく変わっている可能性があり、計画や予算の見直しサイクルが半期・年次に固定されていると戦略の見直しが手遅れになる場合もあります。また、PDCAサイクルの経営を行っている企業では、子会社に対して月次や四半期のサイクルで財務や活動状況を集計・整理し、親会社に事後報告する運用となっているため、問題が発生しても、親会社の対応は必ず事後になります。もし、大きな損失や不正が発生した場合、事後の対応では親会社やグループにとって、致命的なダメージを与える場合もあります。そもそも子会社が作成した財務報告では実態を正確に反映したものであるか不明であり、ミスだけでなく、不正会計や改ざんなどの虚偽報告もありえます。

このように日本企業に浸透しているPDCAサイクルの経営管理は、変化が速い経営環境では機能しないという欠点があります。

OODAループをベースにした先制型経営リスク管理

環境変化の著しい時代にはPDCAサイクルよりもOODAループが適しています。OODAループとは、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐によって提唱された意思決定のための理論で、朝鮮戦争の航空戦についての洞察を基盤にして指揮官のあるべき意思決定プロセスを分かりやすく理論化したものです。環境の変化を監視し(Observe)、変化を素早く掴み、正確に状況判断すること(Orient)により、最適な意思決定を行い(Decide)、タイムリーに行動すること(Act)がOODAループの特長です。

OODAループを経営に活用すれば、経営リスクを早期に検知し、影響が大きくなる前に的確な判断を行い、施策をタイムリーに実施することができます。つまり、問題が発生した後ではなく、発生する前に先制型で対処する経営管理を行うのです。(以降、本コラムでは、この経営管理方法を「先制型経営リスク管理」と呼びます。)
但し、この方法を実現するには監視(Observe)と状況判断(Orient)の能力を高める必要があります。現実に様々な情報をリアルタイムに監視するには専任者が必要になりますし、また、専任者を設けたところで、多種・多様・大量な情報の変化を見逃さずに観察することは至難の業です。
そこでコンシストは「ITを活用した先制型経営リスク管理」を提案します。OODAループの中の監視(Observe)と状況判断・予測 (Orient)にITを活用するのです。近年、コンピュータの処理性能の向上と機会学習やAI技術の発達により、多種・多様・大量データの中から異常傾向や法則性を発見したり、予測を行うことが容易になっています。

IT活用による先制型リスク管理のイメージ(資金・経理業務の場合)

IT活用による先制型リスク管理のイメージがわかるよう資金管理、経理業務を対象に具体例を説明します。資金管理、経理業務におけるリスクは様々ですが、その中でも代表的なリスクを以下に記載します。

資金効率: 長期に渡って子会社に滞留資金が眠っている。
流動性:  銀行口座の残高が減少傾向にあり、資金ショートの懸念がある。
為替変動: 外貨の滞留資金が多くあり、為替の下落が懸念される。
支払不正: 特定の業者への支払額が急増している。理由のわからない出金がある。
貸し倒れ: 得意先からの回収が滞っている。売掛金残高が増加している。

こうしたリスクは、銀行口座の入出金データや仕訳データを解析することで、ある程度、把握することができます。
下記の図はコンシストが開発したリスク分析ツール「SKELETON RAT」(以降 RAT)と「ルールベース異常検知ツール」を活用した先制型経営リスク管理の全体イメージです。

RATは、PCで動くコンパクトなリスク分析ツールで、優れたBI機能(非定型データ分析機能)を備えている点が特長です。様々なCMS/TMSや会計システムからデータを取り込んで分析することを想定しており、大手企業での実績もあります。
「ルールベース異常検知ツール」とは、予め、アラートを出す条件を登録し、蓄積した取引データの中にアラートを出す条件に合致したデータを発見するとダイナミックにアラートを出力するシステムです。AML(アンチマネーロンダリング)やEBM(イベントベースドマーケティング)に活用されています。
RATの新機能「異常検知」を使うと、RATのデータベースに取り込まれた入出金データを解析し、銀行口座毎に入出金の金額、回数、パターンなどをスコアリングし、異常度の高い銀行口座を発見することができます。(統計的異常検知) 
異常を発見後は、異常度を表す各指標を参考に、何故、異常度が高いのかを担当者がRATのBI機能を使って非定型分析を行い、異常の原因となった当該口座の取引を絞り込みます。しかし、限られたデータだけではすべての真実は掴めませんから、当該銀行口座を保有する子会社から情報収集するなどの定性調査を行います。そして異常の原因が不正やその他の管理すべきリスクの兆候を示すものであれば、今後、監視すべきリスクとして「ルールベース異常検知ツール」にアラート対象として設定します。「ルールベース異常検知ツール」に設定すると、その後、設定条件と合致した取引データを発見すると自動でユーザーにアラート通知します。
RATでは知見化されていない(原因がわからない)異常を発見できますが、「ルールベース異常検知ツール」では、「この条件と合致した場合は、この不正を犯している可能性がある」といった具合に知見化したものを登録し、リスクの早期発見に役立てます。
このふたつのツールを両輪として活用することにより、企業はリスクの観察(Observe)と状況判断(Orient)の能力を継続的に強化し、迅速な意思決定を行えるようになります。
RATでは銀行の入出金データだけでなく、会計の仕訳データの異常検知も行えます。仕訳データを勘定科目別に増減傾向を解析し、変化パターンの異常を検知することができます。データを蓄積することにより、会計不正や売掛金の増加傾向、支払不正の兆候等を発見することが可能です。

先制型経営リスク管理のための業務改善

先制型経営リスク管理を実現するには、IT化と併せて組織学習を行い、リスクに対する行動指針を明確化・共有することが重要です。リスクに対するアクションの選択肢を予め定めておき、手遅れにならないよう指針を定めておくのです。
例えば子会社の外貨口座が一定残高を超えた場合、グループファイナンスにより親会社に資金を預けるルールにするとか、得意先の売掛金の回収遅延が顕著になってきた場合、親会社と連携して得意先の与信調査を実施し、債権売却や新規取引を中止するなど指針を明らかにしておきます。企業によって意思決定を行うための基準や閾値は異なりますから、コンピュータに任すだけでなく、常日頃からの分析やシミュレーションも重要です。今後、RPAの普及により多くの業務が自動化されることが予想されますが、このような業務改善や分析をコンピュータに任せることは当面難しいのではないでしょうか。
先制型経営リスク管理は、既知の知見を元にスタートしますが、以下のような改善ループをまわすことで高度化を図ることができます。

  • ①リスクの監視
  • ②RATによる新たな異常パターンの発見
  • ③人による原因調査、メカニズム解明
  • ④管理すべきリスクとしてアラート対象にするか判定
  • ⑤知見化したリスクのアラート条件定義
  • ⑥アラート時の行動指針定義・共有
  • ⑦ルールベース異常検知ツールにアラート条件設定

RATの活用によるデータ分析PoC

コンシストでは、顧客企業の入出金データや仕訳データをRATに取り込み、異常検知機能の有効性を実証するPoCを実施しています。これにより、ITを活用した先制型経営リスク管理が当該企業で実現可能かも併せて検証できます。
PoCでは、RATから出力された分析結果をコンシストが考察し、本PoCの成果について顧客企業に報告します。

RATを活用したPoCの事例についてはSKELETON RAT紹介ページの「大手部品メーカー ニフコ様の事例」をご参照ください。RATにより会計データだけではつかめない入出金の異常を検知可能であることを検証しています。

先制型経営リスク管理の発展

前述の資金・経理業務の例は先制型経営リスク管理の一環であり、一部に過ぎません。
資金や会計データだけでなく、経営に関わる様々な活動情報を収集することにより、先制型経営リスク管理の発展(拡大・拡充・高度化)が可能になります。

リスクには下方リスク(損失の可能性)だけでなく、上方リスク(利益の可能性)があり、その両方に対応したものが本来の経営リスク管理です。
RATの異常検知手法は汎用性があり、様々なリスクを対象にすることが可能です。例えば販売データを解析対象にして、販売数や販売額の異常検知を行い、販売戦略に活用することも可能です。グローバルの拠点の販売データを監視対象にして、特定の地域で特定の商品の売れ行きが急増したり、急減した場合に、その兆候を検知することが可能です。
近年、BSC(バランス・スコア・カード)を経営に取り入れ、KPIツリーを策定している企業が増えていますが、策定後のモニタリングが十分できておらず、KPIツリーの有効性が検証されていない企業が多いように思われます。
KPIツリーが有効とは、上位KPIと下位KPIに相関性がある状態です。例えば、売上を上位KPI、顧客訪問数を下位KPIとした場合、顧客訪問数と売上が比例関係に近ければ、有効ですし、遠ければ無効です。もし、顧客訪問数を増やしても、売上が伸びないようであれば、その戦略そのものが無効ということになります。
RATを使えば、財務KPIに影響を与える非財務系KPI(先行指標)の異常や財務KPIとの相関性の異常を早く掴み、事業部門、子会社とタイムリーに共有することにより、変化に強い経営が可能になります。異常検知により、KPI間の相関性の下降を早期に発見できれば、戦略の見直しをタイムリーに行えます。

ERP等の基幹システムに蓄積された様々な業務データを整備し、RATと連携することができれば、先制型経営リスク管理の拡大・拡充・高度化が可能になります。

例えば、売掛金回収予定日と売掛金回収日との乖離、新規仕入れ先への支払件数の増大、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の悪化傾向などを、もっと詳細な管理単位で、もっと早く掴むことができれば、迅速に経営判断が行えるようになるでしょう。

本コラムでは経営リスクの中で主に財務と不正に関わるリスク対応について取り上げました。CEOやCFOにとって、もうひとつ重要な経営リスクは業績変動リスクです。業績は外部環境の変化、社内活動、財務内容により変動します。CEOやCFOは株主などのステークフォルダーにコミットした財務目標の達成に向けて最善を尽くす必要がありますし、公表した予想については根拠のある説明が求められます。次回コラムでは、業績予測精度の向上と業績リスクへの先制対応を目的に、RATと併せて為替・金利・経済指標など外部情報を活用したソリューションについてご紹介します。

コンシストのサービス

コンシストは企業の先制型経営リスク管理の実現に向けてRATのレベルアップやPoCの支援だけでなく、その後の構想策定、システム構築、運用まで企業を継続的に支援します。

構想策定フェーズにおいては、IT化構想の策定を支援すると共に、ITを活用した知見の蓄積、行動指針の整理、組織学習等の業務高度化サイクルの運用についても支援します。
システム構築フェーズにおいては、ERPベンダーやCMS/TMSベンダーと連携し、RATのカスタマイズやデータウェアハウス構築を行います。
運用フェーズにおいては、コンシストが構築したシステムの保守サポートだけでなく、RATを使ったデータ分析のアドバイスや業務代行も行います。
どのような形で関与するかはお客様のご要望に沿ってご提案しますので、ご検討頂けると幸いです。

解説者紹介

中村正史
株式会社コンシスト/ビジネス戦略事業本部長・チーフコンサルタント

アビームコンサルティングを経てコンシストに入社。
前職を含め20年以上、キャッシュマネジメントに関わるコンサルティング、システム開発に従事し、多くの銀行、事業会社を支援。
現在、日本政策投資銀行(DBJ)の連結子会社である株式会社コンシストに在籍し、DBJと連携して、地方銀行、地方企業へキャッシュマネジメントの普及活動、高度化支援を行っている。

【主な著書】

『キャッシュマネジメントシステム導入・運営ガイド―グループ経営の効率化を図るCMS』(中央経済社)
『Eビジネス経営―市場を制する戦略と経営基盤』(東洋経済新報社)
『金融特区と沖縄振興新法』(商事法務)

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